ガスクロマトグラフィー(GC)の基礎
Ⅰ章-4 クロマトグラフィーの基礎・理論
Ⅰ章-4-1 クロマトグラムとその名称
試料を注入してから各物質が検出されるまでの時間を保持時間といいます。この保持時間は、物質が液相に溶解していた時間(空間補正保持時間)とキャリヤーガスによりカラム内を移動していた時間(ホールドアップタイム)の合計になります。ホールドアップタイムはカラムに保持されない化合物(メタン,Airなど)を注入し、その溶出時間を測定することで求められます。 空間補正保持時間とホールドアップタイムの比を保持係数といいます。保持時間や空間補正保持時間は、キャリヤーガス流速によって変化しますが、保持係数は、キャリヤーガス流速の影響を受けません。同一カラムで一定温度下の分析では、保持係数は溶質ごとの定数となりますので、ピークの同定において有力な情報となります。
tR | :保持時間 |
t0 | :ホールドアップタイム(カラム内素通時間) |
tR ' | :空間補正保持時間 |
W | :ピーク幅(ベースラインでのピークの幅) |
W1/2 | :半値幅(ピーク高さ1/2でのピークの幅) |
h | :ピーク高さ |
h1/2 | :ピーク高さの1/2 |
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Ⅰ章-4-2 保持時間・空間補正保持時間
試料を注入してから各物質が検出されるまでの時間を保持時間といいます。
この保持時間は、物質が液相に溶解していた時間(空間補正保持時間)とキャリヤーガスによりカラム内を移動していた時間(ホールドアップタイム)の合計になります。
ホールドアップタイムはカラムに保持されない化合物(メタンなど)を注入し、その溶出時間を測定することで求められます。
Ⅰ章-4-3 保持係数
空間補正保持時間とホールドアップタイムの比を保持係数といいます。
保持時間や空間補正保持時間は、キャリヤーガス流速によって変化しますが、保持係数は、キャリヤーガス流速の影響を受けません。
同一カラムで一定温度下の分析では、保持係数は溶質ごとの定数となりますので、ピークの同定において有力な情報となります。
保持係数はクロマトグラフィーにおいてカラムのロット間ばらつきを確認するための重要なファクターでもあります。下の表は、弊社で製造しているInertCapカラムの保持係数をプロットしたものです。保持係数が常に安定した品質であることが分かります。
Ⅰ章-4-4 理論段数 N (number of theoretical plates)
理論段数とは、カラムの分離効率を数値化したものです。
理論段数が大きいほど性能のよいカラムといえます。
性能のよいカラムとは、カラム内でのピークの広がりが小さいものをさします。
例えば、上の図に示した2つのクロマトグラムはどちらも2成分がまったく同じ間隔で溶出しています。
しかし、一方は完全に分離していますが他方は不分離です。これは、分析に使われたカラムの性能の違いによるものです。このカラムの性能の違いを表す方法として使われるのが理論段数になります。
理論段数は、次式によって計算することができます。
Ⅰ章-4-5 理論段相当高さHETP(height equivalent of one theoretical plate)
理論段相当高さHETPとは、理論段1段に相当するカラム長さをmm単位で表したものです。
HETPが小さいほど性能のよいカラムであるといえます。
また、Van Deemter の式では、以下のように表します。
Ⅰ章-4-6 分離度R(resolution)
分離度とは、隣接する二つのピークがどの程度分離しているか表したものです。
ピークは完全分離すると分離度は1.5以上になります。
または、隣接する2つのピークのピーク幅が同じ場合、次式で表すこともできます
つまり分離を改善したい場合は、「効率の基準」「ピーク分離の基準」「保持の基準」に着目して変更します。
各分離度の実際のクロマトグラムを以下に示します。