ガスクロマトグラフィー(GC)の基礎
Ⅱ章-1 キャピラリーカラムの概要
キャピラリーカラムの構造
キャピラリーカラムとは、中空細管の内面に、液相や吸着剤を塗布、または化学結合させたものです。
キャピラリーカラムの材質には、フューズドシリカ(溶融シリカ)チューブが最も多く使用されています。これは、フューズドシリカが、高純度で表面活性点が少なく(金属含有量≦1ppm、OH基含有率<120ppm)、さらにチューブの外側をポリイミド樹脂でコーティングしているので、折れにくく取り扱いやすいためです。
キャピラリーカラムの特徴
1. シャープなピークが得られ、高感度分析に有利
キャピラリーカラムはパックドカラムのように充填物がなく、サンプルが様々な経路を経ることで拡散することがないのでシャープなピークが得られます。
また、ピーク幅が狭いため、リテンションタイムの再現性も良好です。
2. 高分離
キャピラリーカラムはパックドカラムのように充填物がなく、圧力損失が少ないため長いカラムを作成することが可能です。カラムは長いほど分離が良くなります。
3. 不活性度が高い
パックドカラムは多くの場合、珪藻土と呼ばれる天然物に液相をコーティングしています。
そのため、ロットによっても組成が変わり、不純物となる金属も多く含んでいます。フューズドシリカは高純度で表面活性点が少ないため、吸着などが少なく、微量成分の安定的な分析に適しています。
充填剤担体の化学組成例
成分 | 白色系珪藻土 | レンガ系珪藻土 |
---|---|---|
SiO₂ | 90.0 | 89.2 |
AI₂O₃ | 3.6 | 4.1 |
Fe₂O₃ | 1.4 | 1.5 |
Tio₃ | 0.2 | 0.2 |
CaO | 0.4 | 0.5 |
Mg | 0.5 | 0.5 |
Na₂O + K₂O | 3.2 | 1.0 |
4. ただし、一部の分析においてはパックドカラムが有利
ほとんどの分析に対してキャピラリーカラムが有利です。ただし、パックドカラム用の液相は数百種類あり、キャピラリーカラムの数十種類に比べて圧倒的に多いです。
一部の分析においてはキャピラリーカラムに置き換えできないものもあります。
また、無機ガス分析などは大量注入が可能なパックドカラムの方が有利です。
キャピラリーカラムの種類
キャピラリーカラムは、WCOTタイプ、SCOTタイプ、PLOTタイプの3種類に大きく分類されます。
これらは全てOpen Tubular Column(中空カラム)と呼ばれます。
WCOT (Wall Coated Open Tubular)
WCOTタイプは中空細管の内面に、液相を塗布、または化学結合したものです。
現在最も多く使用されているキャピラリーカラムは、WCOTタイプの化学結合型です。
この化学結合型のキャピラリーカラムは、管内に液相を塗布したあと、液相同士、あるいは液相とキャピラリーの内面を化学的に結合させています
SCOT (Support Coated Open Tubular)
SCOTタイプは中空細管の内面に、NaClのような塩を固定化し、その上に液相をコーティングしたものです。WCOTタイプへの過渡期に使われ、現在ではほとんど見ることがありません。
PLOT (Porous (thin) Layer Open Tubular)
PLOTタイプは中空細管の内面に、ポーラスポリマーやアルミナ、モレキュラシーブなどの吸着型充填剤などを固定したものです。
WCOTタイプのカラムでは対応できない無機ガスや低級炭化水素の分析に使用されます